監修:岡本秀興(社会保険労務士/厚生労働省「多様な働き方」有識者委員・2025年度)
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづきます。2026年4月施行の改正を反映しています。
目次
えるぼし認定基準の全体像
えるぼし認定の基準は、「すべての段階に共通する基準」と、段階を決める「5つの評価項目」の2階建てです。共通基準を満たしたうえで、5項目のうちいくつをクリアできるかで、1段階目(1つ星)から3段階目(3つ星)までの星の数が決まります。
まず段階(何項目の要件を満たせば何つ星か)を押さえ、そのうえで5項目それぞれの中身を見ていくのが、いちばん理解しやすい順序です。この記事もその順で解説します。早見表は次のとおりです。
| 段階 | 満たす評価項目の数 |
|---|---|
| 1段階目(★) | 1〜2項目 |
| 2段階目(★★) | 3〜4項目 |
| 3段階目(★★★) | 5項目すべて |
2026年4月の改正で、1段階目の基準が一部緩和されました。この記事では、「共通基準 → 3段階の仕組み → 5つの評価項目(各項目の基準・つまずきやすい点・対策)→ 改正点 → 認定不可からの取得」の順で整理します。
すべての段階に共通する基準
どの段階を目指す場合でも、次の3つは必ず満たす必要があります。
- 適切な一般事業主行動計画を策定していること:策定指針にそって、女性活躍の数値目標と取り組みを定めます。
- 行動計画を労働者へ周知し、外部に公表していること:社内周知と、自社サイトなどでの外部公表が必要です。
- 欠格事由に該当しないこと:認定の取消・辞退から3年以内でない、ハローワークが求人を受理しない状態にない、関係法令に違反する重大な事実がない、などです。
土台となるのが「一般事業主行動計画」です。これがなければ、認定のスタートラインに立てません。
3段階の仕組み|何を満たせば何つ星か
えるぼしは、5つの評価項目のうち満たした数で段階が決まります。まず、この段階の仕組みから押さえましょう。
- 1段階目:5項目のうち1〜2項目を満たす。満たさない項目は、実施状況の公表に加え、2年以上連続の改善が必要です。
- 2段階目:3〜4項目を満たす。満たさない項目は、実施状況の公表に加え、2年以上連続の改善が必要です。
- 3段階目:5項目すべてを満たす。
「認定後は実績をデータベースで毎年公表」という条件があるとおり、認定はゴールではなく、取り組みを続ける前提の制度です。取得後の維持も見据えて計画を立てるのが健全でしょう。
5つの評価項目|基準・よくある課題・対策
ここが記事の核心です。5つの評価項目には、それぞれ数値などの基準があります。ただ、実務では「基準は分かっても、自社の数字が届かない」という壁にぶつかりがちです。
そこで各項目を、「基準」「よくある課題(つまずき)」「対策」の3点セットで解説します。自社の状況と照らしながら読み進めてください。
① 採用
- 基準:男女別の採用における競争倍率(応募者数÷採用者数)が同程度※1であること。または直近事業年度で、正社員に占める女性割合と、正社員の基幹的な雇用管理区分の女性割合が、ともに産業平均以上※2であること。
※1:直近3事業年度平均の女性の競争倍率×0.8が、直近3事業年度平均の男性の競争倍率よりも低いこと
※2:産業平均が4割を超える場合は4割を上限
- よくある課題:技術職・現場職など、そもそも女性の応募が少ない業種では、競争倍率をそろえるのが難しくなりがちです。
- 対策:募集要項の書き方や求人媒体を見直し、女性が応募しやすい導線を整えます。競争倍率での達成が難しければ、「正社員に占める女性割合が産業平均以上」のルートで満たせないかを検討します。産業ごとの平均値を確認し、どちらのルートが現実的かを見極めるのが近道です。
② 継続就業
- 基準:直近事業年度で、次のいずれか。女性の平均勤続年数÷男性の平均勤続年数が、雇用管理区分ごとに7割以上。または女性の継続雇用割合÷男性の継続雇用割合が雇用管理区分ごとに8割以上。算出できない場合は、正社員女性の平均勤続年数が産業平均以上でも可。
- よくある課題:女性の採用を増やした直後は、勤続年数の平均が下がり、比率が基準に届かないことがあります。頑張って「女性」を採用したのに数字が悪化する、という逆転が起きがちです。
- 対策:定着施策(両立支援・キャリア面談など)で離職を抑えつつ、算出方法を選び直します。「勤続年数比」で届かなくても「継続雇用割合比」や「産業平均以上」のルートで満たせる場合があります。どの指標で見るかが結果を分けます。
③ 労働時間等の働き方
- 基準:雇用管理区分ごとに、法定時間外労働と法定休日労働の合計時間の平均が、直近事業年度の各月すべてで45時間未満であること。
- よくある課題:繁忙期がある業種では、特定の月だけ45時間を超えてしまい、「各月すべて」の条件を満たせないことがあります。
- 対策:業務の平準化、36協定の運用見直し、勤怠管理の精緻化で、月ごとの残業を抑えます。まずは月別の実態を可視化し、超過が起きる月と部署を特定することが出発点です。
④ 管理職比率
- 基準:直近事業年度で、管理職に占める女性割合が産業平均以上であること。または、1つ下の職階から課長級へ昇進した女性割合÷男性割合が8割以上であること。
- よくある課題:管理職の母数が少ない中小企業では、1人の増減で比率が大きく振れ、産業平均に届きにくいことがあります。
- 対策:管理職の定義を整理するほか、数年計画で候補者を育成しつつ、「昇進割合の男女比8割以上」のルートも検討します。母数が小さいほど、割合基準より昇進実績のルートが現実的な場合があります。
⑤ 多様なキャリアコース
- 基準:直近3事業年度で、常時雇用301人以上は2項目以上(非正社員がいれば必ずAを含む)、300人以下は1項目以上の実績。A:女性の非正社員から正社員への転換/B:雇用管理区分間の転換/C:過去に在籍した女性の正社員としての再雇用/D:おおむね30歳以上の女性の正社員採用。
- よくある課題:制度はあっても「実績」がないと認められない点を見落とし、直前で慌てるケースがあります。
- 対策:A〜Dのうち自社で実績を作りやすい項目を選び、計画的に運用します。300人以下なら1項目でよいため、着手しやすいものから確実に実績を残すのが得策です。
各項目は「どのルートで満たすか」で難易度が変わります。自社データを当てはめ、達成しやすい組み合わせを設計することが、段階を上げる鍵になります。
【2026年4月改正】1段階目の基準緩和
2026年4月施行の改正で、1段階目の基準が緩和されました。変わったのは、「満たさない項目の改善要件」です。
従来は「2年以上連続して実績が改善していること」が必要でした。改正後は、これに加えて、単年度で評価する項目について「3事業年度の平均値を連続して比較し、改善していること(直近3年平均>その前の3年平均>さらに前の3年平均)」というルートが認められました。従来か新ルートの、どちらかを満たせばよい形です。
この見直しは1段階目のみが対象で、2段階目に変更はありません。単年度の数値が振れやすい企業ほど、3年平均で評価できる分、1段階目を目指しやすくなりました。
「認定不可」でも諦めない|要件未達からの取得戦略
ここは実務の核心です。データを当てはめて「今の状態では難しい」と分かっても、そこで諦める必要はありません。
たとえば継続就業で、男女の勤続年数比が7割に届かず改善傾向も示せない場合、そのままでは認定が難しくなります。しかし、算出ルートの選び直しや、達成しやすい項目への戦略的な取り組みで、上の段階を狙える場合があります。
実際、建設業の株式会社つづくは、他の専門家が「2〜3か月では難しい」と難色を示した期限のなかで、TRIPORTの支援によりえるぼし3つ星を取得しました。決め手は、本契約前の事前調査で「今の状況から何をすれば、いくつの星が狙えるか」という見通しを描いたことです。
TRIPORTの「えるぼし認定取得支援コンサルティング」は、単なる申請代行ではありません。認定要件をクリアするための戦略立案から、就業規則や賃金規程の見直しまでを支援します。「認定不可」に見える状態からの取得も、まずは可否と道筋を診断することから始まります。

自社が取得できるかを診断するには
自社が何段階を狙えるかは、次の順序で確認するのが効率的です。
- 必要データを集める:男女別の採用・勤続年数・残業時間・管理職比率など
- 評価項目に当てはめる:どの項目を、どのルートで満たせるかを確認
- 不足があれば戦略を立てる:行動計画と取り組みで達成可能かを検討
自社だけで判断が難しい場合は、専門家の診断を活用する方法があります。TRIPORTでは、無料のえるぼし診断に加え、事前調査(可否判定・戦略立案・労務リスク診断)もご用意しています。本格支援の前に、現実的なゴールを確認できます。

よくある質問(FAQ)
Q. えるぼし1段階目の基準は?
A. 共通基準を満たしたうえで、5項目のうち1〜2項目を満たすことです。未達項目は実施状況の公表と改善が求められます。
Q. 3段階目(最高位)の要件は?
A. 5項目すべてを満たし、実績を「女性の活躍推進企業データベース」で毎年公表することです。
Q. 継続就業の基準がなかなか満たせません。
A. 「勤続年数比7割以上」で届かなくても、「継続雇用割合比8割以上」や「正社員女性の勤続年数が産業平均以上」のルートで満たせる場合があります。算出方法の選び直しが有効です。
Q. 2026年の改正で何が変わりましたか?
A. 1段階目の改善要件に「3事業年度平均の連続改善」というルートが加わり、取得しやすくなりました。
Q. 要件を満たせない場合はどうすれば?
A. 達成しやすい項目やルートを選ぶ戦略で、取得できる場合があります。まずは可否判定と戦略立案をおすすめします。
まとめ:段階を押さえ、達成ルートを設計する
えるぼし認定基準は、「共通基準+5つの評価項目」というシンプルな構造です。段階は満たす項目の数で決まり、各項目は「どのルートで満たすか」で難易度が変わります。
大切なのは、自社データを当てはめ、達成しやすい組み合わせを設計することです。「あと1項目」で段階が上がることも、「認定不可」に見えて戦略次第で取得できることもあります。TRIPORTでは、社会保険労務士が現状の可否判定から取得までを支援しています。まずは無料診断で、狙える段階を確認してみてください。


